自由研究のすすめ

大槻, 2014.02.14

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 「自由研究」、この言葉、懐かしく心地よい響きですね。小学校の夏休みに、工作、昆虫採集、理科実験など好きなことやって、学期が始まったら発表するというやつです。考えて見れば、大人になってからも、分析して報告、調べて記事を執筆、研究して学会で発表など基本は変わらないですね。業務や仕事としてお金をいただいてやるのが「不自由研究」、自分が好きなこと、興味があることを気の向くままに進めるのが「自由研究」です。当然、研究の質は自由研究の方が高くなる傾向がありますし、自己満足という観点からもおすすめです。
 さてここでは、この自由研究を活用したコミュニティ運営の方法について、本資料で考察し、まとめておくことにします。つまり「The Free Study of Free Study(自由研究そのものの自由研究)」がテーマです。

【自由研究型コミュニティ運営法】

 最初に、「自由研究型コミュニティ運営法」を手法として提示しておきます。これは一つの作業仮説です。適用時にいろいろ状況に応じてカスタマイズしなくてはならないでしょうし、表だって「自由研究」を表明しない場合もあります。

〔中心の設定〕

 もともとコミュニティというのは、参加・退出が自由な活動です。異なる組織、文化、人の興味もさまざまです。その状況で人が継続的に集まるためには、「中心」が必要です。これは、何か問題意識を共有できるテーマ、あるいは、グループを代表するカリスマ的な人がいるとよいでしょう。ここでのポイントは、決してスコープ設定をしてはいけないことです。あくまでも中心であって、境界設定ではありません。「象徴」の設定です。
 ゆるいキーワードをテーマとして掲げるのも効果的です。活動をしていくと認識も変わっていきます。厳格な定義を試みてもすぐ変更しなくてはならなくなりますし、具体的なツールやものを掲げてもキーワードそのものが消費されてしまいます。適度に曖昧で夢を与えるものがあると活動の求心力になります。

〔メンバの参加〕

 信頼関係を築くことができる人々を集めます。信頼関係とはお互いの考えを尊重し理解し合える関係ということです。実際の活動ではコミュニケーションが濃密になっていくので、事実上のコアなメンバ数はあまり多くはなりません。5〜15名程度が経験上のコントロール可能な大きさです。参加・退出が自由ですから、途中参加の方もいれば、だんだん疎遠になっていく人もいます。コアメンバからの紹介で新規参加することが多いでしょうし、活動を進めて行って、これはと言う人に声をかける場合もあります。
 メンバが固定化してしまうと、アイディアも出にくくなってきます。そういう場合には思い切って、全く違う文化圏の方々や、他のコミュニティとの交流などを仕掛けて新しいメンバを探すとよいでしょう。

〔自由研究の宣言〕

 各メンバは、それぞれ「中心」を考慮して、自由研究のテーマ、研究計画、アプローチなどを決めます。仮説、論証、検証といった従来のいわゆる学術的な研究でもよいし、何か作るといった目標を掲げてもよいです。重要なことは、各自の本心、想いから発していることです。小さな挑戦であってもオリジナリティがあることが重要です。
 普段の仕事に関連した事項、継続して取り組んでいることの中から、コミュニティに参加することによって自分の研究が進みそうなテーマ設定をするのが効果的です。研究は、継続的な思考活動です。付け焼き刃的なものは長続きしません。
 所詮、研究というのは自己満足ですし、他人に完全に理解してもらうのは不可能です。既成概念や今までの常識を覆すような研究は、言葉や概念も全く新しく生み出さなくてはなりませんし、そもそも言語化できないような世界が広がっているはずです。

〔会合の運営〕

 コミュニティ活動で会合は、とても大切なことです。Face to Faceで討議をすることによって、参加者間の理解が進み、信頼関係を築いていくことができます。定例会合を1〜2か月に1回程度は設定するとよいでしょう。
 会合では、それぞれの自由研究の進捗や成果を順次発表していきます。そこで得た刺激を自由研究推進に活かしていきましょう。定例会合が設定されていると、研究のペースメイキングにも役立ちます。1回の会合で全員の発表をする必要はありません、進展があった人だけでもよいですし、簡単な各自の状況報告を行う方法でもかまいません。発表や討論の際には、他の人に自分の考えや検討結果が分かるように説明することがポイントになります。つまり、自らの研究を他の人が使ったり利用したりする場合に、文脈(コンテクスト)を述べることが肝要です。
 半年〜1年程度活動を継続していくと、各自の自由研究がまとまってくるでしょう。オープンフォーラムや何らかのイベントを開催すると、新たな刺激や広がりがでてくるでしょう。場合によっては、研究成果を論文集にまとめたり、冊子や書籍のようなもの作るというのも、足跡を残すという意味でよいかもしれません。

〔知の編集〕

 創造的活動で重要なことは、進化・成長していく認識を一歩一歩重ねていくことです。多くのコミュニティ活動では、討論して盛り上がっても、後日振り返ってみると何を議論したかを忘れてしまったり、毎回同じ議論が繰り返されたりすることが多いのです。各自の自由研究を進めていくには、会合の後に、自らの考えや、他の人からの意見を消化して自分のものにしていかなくてはなりません。蓄積の方法は人によって異なりますが、研究ノートをつけたり、時々、きちんとした書き物を残していくとよいでしょう。
 コミュニティとして設定した「中心」に対して、各メンバの研究が進んできたら、全体を上手くコーディネートして、何か一つのまとめができると理想的です。おそらく研究論文誌のようなものがよいでしょう。各メンバがそれぞれの研究成果を出し合って、分担執筆することになるでしょう。それぞれの人が出荷品質になるように、プロモートしたり、タイミングを見計らうことも必要です。
 いくつかの研究成果を横断的に見ると、新しい発見があるかもしれません。さらに、複数の成果から新たなメッセージをまとめることができるかもしれません。こういった広い意味での知の編集作業を重ねていくことによって、コミュニティ全体としての活動の価値も高まっていくことになるでしょう。

【ケーススタディ】

 前述の「自由研究型コミュニティ運営法」の視点で、筆者の今まで関わったコミュニティ活動を振り返ってみることにします。

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〔見積・契約WG〕

アジャイルプロセス協議会設立時の2003年7月から現在まで続いているワーキンググループです。

・ 中心の設定

 アジャイルプロセスに関する見積りや契約といったビジネス上の課題

・ メンバの参加

 アジャイルプロセス協議会の設立時メンバからビジネスに関連した人々が参加。6名程度で安定しています。

・ 自由研究の宣言

 明示的に宣言することはありませんが、それぞれの参加メンバが何らかの形でアジャイルプロセスをビジネスとして実践しているため、自然にお互いの興味やアプローチが見えていました。
 テーマは、参加メンバそれぞれのビジネスに直結したアジャイルプロセス中心の開発企業経営、見積り評価、プロセス評価、社内啓蒙、調達といったものです。

・ 会合の運営

 概ね月1回の定例会合を開催しています。当初は、それぞれの興味のあるトピックスを議論しました。半年に1回の合宿を行っており、定例会合は合宿の旅程打ち合わせが主になってきています。

・ 知の編集

 グループ全体として研究誌のような書き物としての成果物をまとめることはありませんが、地方での合宿の際に地元のコミュニティと交流をし、「ソフトウェア技術者サミット」という半日程度のイベントを開催しています。

・ 大槻の自由研究

 もともと一(いち)では、ソフトウェアの見積りの第三者評価をビジネスしている関係上、アジャイルプロセスを対象とした見積り手法を確立したいと考えていました。ウォータフォール型開発での見積り手法として、FP(ファンクションポイント)に基づく手法や、COCOMO(Constructive Cost Model)法などを使っており、これをアジャイルプロセスに援用することを目論んでいました。
 しかし、アジャイルプロセスでは、コスト面よりも、価値や効果をいっしょに考えなくてはならないということがわかり、このあたりを継続して研究していくことにしました。筆者は、こういったソフトウェアエンジニアリングの経営や経済性の観点から研究をしていく領域として「ソフトウェア経済学」を提唱するに至りました。以下の一連の講演で、この研究プログラムを発表しました。
1.ITプロジェクトの勘と度胸からの脱却:価格・コスト・価値を取り巻く新視点(ソフトウェア経済学), PMI東京月例テクニカルセミナー, 2006.11.10
2.ソフトウェア経済学の概要:コスト分析・資産評価への科学的アプローチ, JEITA情報システム技術シンポジウム, 2006.11.21
3.ソフトウェア経済学:マネジメントのためのコスト・価値・価格の考え方, プロジェクトマネジメント学会, 2007年春季研究発表大会キーノート講演, 2007.3.15
4.ソフトウェア経済学のすすめ:価値指向のソフトウェア開発アプローチ, 『ITによるビジネス価値の向上』シンポジウムパネル討論, 2007.11.2
 この研究領域については、2010年4月よりビジネスブレークスルー大学の経営学部の講座として「ソフトウェア経済論」を持つに至りました。

〔アジャイル・ソフトウェアセル生産WG〕

 アジャイルプロセス協議会の2005年6月開催の第4回総会セミナーでの松本吉弘先生の「ソフトウェアにおけるセル生産方式:ビジネスプロセスとソフトウェアエンジアリングプロセスの統合」の講演を契機に2005年8月に開始し、2009年1月まで3年半程活動していたワーキンググループです。英語は、Agile / Cell-based Software Development Working Group (ACSD-WG) です。

・ 中心の設定

 中心は、まぎれもなく松本吉弘教授です。ご高齢ですがまだまだお元気です。お題目としては、「行列ができるソフトウェア設計事務所を目指し、ソフトウェアセル生産方式や諸々のアジャイルプロセスの適用を検討し、日本のお家芸であったソフトウェアファクトリーの現代版を検討し、世界に向けて発信していきます。」としました。

・ メンバの参加

 松本先生のご体調のこともあり、コンセプトリーダとしてご指導いただき、大槻がリーダをつとめました。ステアリングメンバとして、マイクロソフトの萩原正義氏、NRIの高橋剛氏、日本IBMの榊原彰氏、同 大沢浩二氏に参加いただきました。登録メンバで28名、実際に参加してアクティブな活動をした方々が半数程度でした。

・ 自由研究の宣言

 明示的に宣言することはありませんでしたが、松本先生から会合時に提供される新しい考え方や動向を、それぞれの参加メンバが各自の力量や興味に合わせて解釈し直し、自らの活動・研究に活かす姿勢が見られました。

・ 会合の運営

 概ね月1回の定例会合を開催しました。定例会合数は36回。1年間程活動を行った時点で、オープンフォーラムというイベントを2006年10月13日に恵比寿で開催しました。アクティブなメンバがそれぞれの取り組みを紹介し、最後にパネル討論を行う形式としました。
 運営方法として「輪唱方式」という、自由研究方式の前身のような方法を試みました。当時の資料からの引用ですが、以下のような方法です。

 かえるの歌の輪唱のように、各自が本WGに参加して刺激を受け、問題意識やアイディアが熟成してきた段階で、適宜、研究・検討を開始し、毎回その成果を発表し、議論していく方法。各自の問題意識、理解で、会合で議論したものを、自分の言葉で毎回インクリメンタルに拡充していくところがポイント。

・ 知の編集

 グループ全体として研究誌のような書き物としての成果物をまとめることはありませんでした。オープンフォーラムが、一つの中間地点でのまとめと言えるでしょう。残念ながら、最後の方は会合への参加も芳しくなくなってきて、発展的解消しました。

・ 大槻の自由研究

 一(いち)では、見積り手法を活用した第三者評価をビジネスとしていましたが、開発プロセスに踏み込むとアジャイル型の開発に対しても対応していかなくてはなりません。当時、アジャイルプロセスの導入の依頼もあり、アジャイルプロセスの本質を掘り下げる必要を感じていました。一は開発そのものを行わないため、アジャイルプロセスの事例や実践的な方法を知るために、よいパートナーを探していました。
 アッズーリ社の濱勝巳氏が、アジャイル型のソフトウェア開発をビジネスとしており、おりしも、「人月からの脱却」を目指していたために、深い交流をさせていただきました。
 その一つの成果が、「アジャイル・ソフトウェア・セル生産方式」です。
•大槻繁, 濱勝巳, アジャイル・ソフトウェア・セル生産(人月から価値駆動へ), PM Conference 2008, 2008.8.1
 この講演で、「人月からセル月へ」や、価値駆動の考え方、シェフモードとコックモードの区別など、新しい考え方を提唱することができました。

〔知働化研究会〕

 2009年の春頃、当時、アジャイルプロセス協議会の活動が設立から5年半を経過し、アジャイルプロセスの普及・啓蒙の使命は果たしてきており、そろそろアジャイルプロセスの次のことを考えなくてはならないと考えていました。メタボリックス社の山田正樹氏が、2003年頃から思索を深め、「実行可能知識(Executable Knowledge) と様相(Texture)」という新しい考え方を提唱していることを知り、これを核にして新しい活動をしていこうと考えました。知働化研究会は、2009年6月に申請・設立され、現在まで続いています。
 知働化研究会のサイトは、http://www.exekt-lab.org/ です。

・ 中心の設定

 2009年の4月から夏に向けて、何回かに渡って、山田正樹氏(メタボリックス社)と懇談して新しいコミュニティの構想を練りました。「作る/使うは同じ」「機能はタダである」といったキャッチフレーズもありました。
 山田氏をコンセプトリーダとして、大槻が運営リーダとして活動をしていくことにしました。「知働化研究会」という名称は、知が働くという知識主導社会を目指すという文字通りの意味と、「人働説から知働説へ」というコペルニクス的転回を想起させてパラダイムシフトを図ることを狙ったものです。ワーキンググループではなく、研究会としたのは、当時から本論文で述べている「自由研究」を運営方法として意識し始めたことも影響していると思います。一方で、「ソフトウェア」や「アジャイル」といった言葉は、表立って使わないように意識しました。

・ メンバの参加

 参加メンバは、この新しい活動に賛同していただけそうな方々に声をかけて、26名程の方々が参加することになりました。マナスリンク社の野口隆史氏から、コミュニティの参加障壁を高く設定するとよいとアドバイスいただき、メンバのコミットメントを強く意識していただく方向としました。このコミットメントも何か外部や成果物といったものではなく、自らにコミットするという究極の自己満足を狙うことを意味しています。

・ 自由研究の宣言

 この研究会では、明示的に「自由研究方式」というのを宣言して、各自がどのような研究をしていくかを順次発表していくことにしました。日頃考えていること、もやもやとしているけれども方向性があること、哲学的な背景など、それぞれのメンバの個性溢れる研究テーマ設定がなされました。

・ 会合の運営

 2009年6月の設立時に、2か月に1回程度の会合(自由研究会)、年1回の研究誌(電子版)の発行、そして、成果がまとまった段階でオープンフォーラム等の開催を目標に掲げていました。
 定例会合は当初予定通りに進み、現時点までに25回以上の会合が開催されています。研究誌は、2010年11月3日の文化の日に合わせて、知働化研究会誌創刊第1号を電子版として発行・公開しました。その後、研究会誌第2号以降の発行も近々に予定しています。合わせて、「知のフリマ」という新しいイベント開催方法も企画して、何回かの会合を試みています。
 また、外部のコミュニティとの連携という位置づけで、2010年6月にSEA(ソフトウェア技術者協会)主催のソフトウェアシンポジウム2010のワーキンググループの枠で「ソフトウェアエンジニアリングの呪縛WG」という3日にわたる集中討論を行いました。山田氏がシンポジウムのプログラム委員長でしたので、企画段階からとても円滑に進めていくことができました。

・ 知の編集

 参加してもらうメンバの質が高い場合、「中心」が明確だと、自然に良い成果がまとまっていきます。知働化研究会誌創刊号は、メンバの方々からそれぞれ何を執筆するかを宣言してもらい、本論文と小論文、寄稿などの分類しました。後は適切なフォローをすることによって、200頁を超えるものが出来上がりました。

•知働化研究会誌創刊第1号, 知働化研究会, 2010.11.3発行 http://www.exekt-lab.org/Home/exerev
 また、ソフトウェアシンポジウム2010のソフトウェアエンジニアリングの呪縛WGには12名の方々が集まり討議の結果を、濱勝巳氏と大槻で最終的な形として、『新ソフトウェア宣言』という次世代のソフトウェアに対するメッセージをまとめて公開しました。
•新ソフトウェア宣言, ソフトウェアシンポジウム2010, 2010.6.11 http://www.exekt-lab.org/Home/newsoftdecl

 これ等は、ある時点でのスナップショットとしての成果物をまとめる観点での編集作業ですが、一方で、知そのものは主観的で各個人にまかせて、イベントそのものを企画・編集しようという活動も進めてきました。これが、2012年11月3日に開催した「知のフリマ」です。その後、知働化研究会主催の第2回の知のフリマは、2013年6月8日に、第3回が同年11月2日に開催されました。

・ 大槻の自由研究

 知働化研究会は私個人にとっても楽しく、新しい試みですし、多くの進展をもたらしてくれたと思っています。いくつかの周辺のコミュニティ活動での成果に対しても知働化の自由研究はよい影響を及ぼしました。
 IPA(情報処理推進機構)/SEC(ソフトウェアエンジニアリングセンター)のエンタプライズ系の委員としてしばし活動しました。2009年11月より松本吉宏委員長の下、非ウォータフォール研究会が発足し、2013年3月まで活動していました。主としてアジャイルプロセスの啓蒙普及を行ってきました。その活動の中で、筆者の自由研究として、従来のウォータフォール型開発プロセスとアジャイルプロセスとの関係について考察し、「ΛVモデル」という新しい枠組みを提唱するに至りました。
•ΛVモデル:V字モデルからの意味論的転回, IPA/SEC 非ウォータフォール研究会資料, 2010.1.1

 JEITA(電子情報技術産業協会)のソフトウェアエンジニアリング技術専門委員会は、二木厚吉教授(北陸先端科学技術大学院大学)を主査として1994年から活動している委員会です。筆者も設立当時から参加しています。定期的にその時々の世の中で注目されているトピックスの講演をきくスタイルで活動しています。
 2010年の夏は、ソフトウェアシンポジウム2010において『新ソフトウェア宣言』をまとめた時期で、これからのソフトウェアは問題解決型から創造型が中心になっていくのではないかと考えていました。折しもJEITAの講演で、永井由佳里教授(北先端科学技術大学院大学)の「デザインの創造性と概念生成」の話を、さらに、喜多千草教授(関西大学)の「イノベーションプロセスの思想史的記述モデルについて」の話をうかがいました。これ等の話を契機としてイノベーションや創造的ソフトウェアの動向についてまとめました。
創造的ソフトウェア構築を目指して:デザイン論とイノベーション研究からのアプローチ, JEITA ソフトウェアエンジニアリング技術専門委員会資料, 2011.1.28
 永井教授との交流を契機に、筆者はデザイン論の知見をソフトウェアの世界に援用するアプローチを視野に入れて研究を進めています。『新ソフトウェア宣言』を世の中に広める意図もあり、以下の一連の発表、および、論文を投稿し公開することができました。
•大槻繁, 実行可能知識としてのソフトウェア構築プロセス, 日本デザイン学会 デザイン学研究, 2012.6.23
•大槻繁, ソフトウェアデザインプロセスの呪縛からの解放:人働説から知働説への転回, Designシンポジウム 2012, 2012.10.17
•大槻繁, 実行可能知識のデザインプロセス:創造的ソフトウェア開発プロセスΛVモデル, 日本デザイン学会, デザイン学研究特集号 / デザイン思考 design thinking, Volume 20-1 No.77, 2012
 なお、上記日本デザイン学会の論文の元原稿は、知働化研究会誌の以下の論文です。
•大槻繁, ΛVモデル:V字モデルからの意味論的転回, 知働化研究会誌 Volume 1, pp105-131, 2010.11.3

〔実践的ソフトウェア教育コンソーシアム〕

 P-Sec(実践的ソフトウェア教育コンソーシアム)では、ワーキンググループ(WG)の形態で進められています。筆者は、2011年11月より、この中のW1のサブリーダとして参加しました。2013年6月からは、同WG2に新装開店して進めています。ここでは、コミュニティ運営という観点から、これ等WG1活動の総括と、WG2の計画について簡単にまとめておきます。

・ 中心の設定

 WG1は、2012年度から、「ソフトウェア産業に関わる人々が、ソフトウェアの要求分析・設計などの手法の基本を押さえられるように、要求分析手法、設計手法、各種モデリング手法、開発方法論、あるいは、これ等を支援するツールについて概観し、知見をまとめ、世の中に提供(公開)」することを目的として設定しました。特定のツールによらないモデリング手法、設計手法、開発方法論について、基本に立ち返って勉強し、さらに、要求分析を重視したツール、実績をあげているツールおよび方法論を中心に適用事例について、議論を進めてきました。
 WG活動計画では、2010年当時は、以下のような目論見があったようです。
   WG1: これまでの方法論や方法の深掘に関する勉強
   WG2: より広い対象分野で適用できる新たな方法論の開発研究
   WG3: 大学等での要求分析講座の開発
筆者が2011年に参加した時には、とりあえずWG1を進めるということになっていたため、サブリーダとして参加した後に、ステアリングをしながら軌道修正していくことにしました。
 WG2の活動については、調査というより、新しい方法論という方向ですが、コミュニティ活動であることも考慮し、「ソフトウェアの方法論に関する実践知と社会基盤」という仕組み作りに重点を置いてみることにしました。

・ メンバの参加

 WG1、WG2通じて概ね15名〜20名少々のメンバ参加があります。

・ 自由研究の宣言

 明示的に未だ宣言はしていませんが、「知のプラットフォーム」を構築していくことにしています。元来、この団体が「実践的ソフトウェア教育」をうたっていますから、大学や企業での人材育成、それにともなうカリキュラムや伝承の方法をテーマにしていくことになるでしょう。これを新しい時代の人材育成の社会的な仕組みとして確立していくことを目指しています。

・ 会合の運営

 概ね2か月に1回の定例会合を開催しています。

・ 知の編集

 WG1の活動では、2012年の秋にオープンフォーラムを開催し、2013年度末までの活動をまとめたWG1活動報告書を発行しました。WG2については、未だまとめ方は未定です。

・ 大槻の自由研究

 WG1、WG2を通じて、技術の整理方法について検討しています。技術の全体像を把握し、個々の技術を位置づける方法を構築しました。このあたりについては、WG1報告書に掲載しています。